マイクを持っているのに声が前まで届かない。歌い終わったあとに友達から「え、なんて歌ってたの?」と聞き返される。そういう経験、ありませんか。
声量が出ない原因は一つではありません。「小さい」「こもる」「すぐ喉が疲れる」それぞれに、異なる原因と対処のしかたがあります。このページでは、その3つをひとつずつ丁寧に解説します。歌が上手くなる方法を知りたい方にとって、声量の理解は大切な一歩です。
声量って、”大きさ”だけじゃないんです

声量というと「とにかく大きく出す」イメージを持つ方も多いです。でも実際は、声量には「大きさ」だけでなく「響き」と「通りやすさ」が含まれます。
力いっぱい張り上げた声は、意外と遠くまで届きません。喉に力が入りすぎると声がつぶれて、むしろ通らなくなってしまうんです。音が太くなっても、空気を切り裂くような鋭さがなくなる感じです。
逆に、力を抜いて体の中で響かせた声は、小さくても会場の奥まで届くことがあります。プロの歌手が「叫んでいない」のに声が通るのは、この響きの使い方が上手だからです。
目指すのは「大声」ではなく「響く声」「通る声」です。この前提を持っておくと、以降の練習方法がずっとスッキリ理解できるようになります。
声が小さいと感じている方へ
声が小さくなる原因として特に多いのが、息の量の不足と、姿勢の問題です。
声の原料は「息」です。息をしっかり使えないと、声帯を十分に振動させることができず、音量が出ません。歌っているときに息が途中で切れてしまう方は、腹式呼吸が上手く使えていない可能性があります。
腹式呼吸は、お腹をふくらませながら息を吸い、お腹をへこませながらゆっくり吐く呼吸です。胸が大きく動く「胸式呼吸」よりも、深く・長く息を吸えるのが特徴です。たっぷり吸えた分だけ、しっかり声に変えられます。
それから、姿勢の影響も見逃せません。猫背になると胸郭が狭まって、肺に十分な空気が入りにくくなります。スマホを見ながらよく猫背になっている方は、歌うときだけでも背筋をスッと伸ばしてみてください。それだけで吸える息の量が変わる方がいます。
もうひとつ、口の開き方も大切です。口をしっかり開けないと、声の出口が狭くなって音量が出にくくなります。特に「あ」「え」「お」の母音は、口を縦に大きく開けることを意識してみてください。
声がこもる・響かないと感じている方へ
声がこもって聞き取りにくい、と言われる方に多い原因のひとつが「舌が奥に引っ込んでいること」です。
舌は声道の中で大きなスペースを占めています。舌の付け根が喉のほうへ沈み込むと、声の通り道がふさがれてこもった音になります。意識しないと気づきにくいのですが、多くの方が無意識に舌を後ろに引いたまま歌っています。
もうひとつ大きいのが、「喉が開いていない」状態です。あくびをするとき、口の奥がふわっと広がる感覚がありますよね。あの感覚が、喉を開く方向のヒントになります。喉仏(のどぼとけ)のあたりに軽く手を当てて、あくびのときに少し下がるのを確かめると分かりやすいです。歌うときにこの空間を作れると、声が体の中で響いてくれます。
響きが使えるようになると、力まなくても遠くまで声が届くようになります。口の奥・鼻の奥で声を共鳴させるイメージです。最初は感覚がつかみにくいですが、あくびの感覚を思い出しながら歌ってみると少しずつ変わってきます。
舌のトレーニングとして効果的なのが、「ラ・タ・ナ・カ」行の発声練習です。この4行は舌を大きく動かす音なので、繰り返すことで舌の動きがなめらかになります。舌がよく動くようになると、声道が広がりやすくなってこもりが改善しやすくなります。
大きい声を出すと喉が疲れる方へ
少し歌うとすぐに喉が痛くなる、声がかすれる、という方は「喉声」になっている可能性があります。
喉声とは、喉の筋肉に過剰に力を入れて声を押し出す状態のことです。声帯に余計な負担がかかるため、短時間で疲れやすく、枯れやすくなります。歌った後に喉がヒリヒリする感覚がある方は、このパターンかもしれません。
解決の方向性は、「喉で押さない」こと。前の項目でお話しした「喉を開く」「共鳴を使う」ができてくると、喉の力みが自然に抜けてきます。息の流れに乗せて、声を体の外に出すイメージです。
無理に張り上げないことも大切です。音域の限界に近いところで無理に出し続けると、それだけ喉への負担が増します。喉が痛くなってきたと感じたら、その日は無理をせず休むことが一番です。
体を整えると、喉の力みが自然に取れて楽に声が出るようになった、という方がいます。喉だけを頑張るのではなく、体全体の状態を意識することが、喉を守ることにもつながります。
声量の出し方は、まずここから
声量アップのための練習は、たくさんありすぎて迷うかもしれません。ここでは特に入口として取り組みやすいものを6つ紹介します。毎日短時間でも続けることが大切で、喉が痛いときは必ず休んでください。
まず「姿勢を整える」こと。背筋を伸ばして、顎を少し引いた状態で立つか座るかします。これだけで息の通り道が変わります。
次に「腹式呼吸の練習」。ロングトーン(一定の音を長く伸ばす練習)をしながら、息が途切れないように一定の声量を保つ練習が効果的です。「あー」を一息で何秒間伸ばせるかを計ってみるのが分かりやすいです。
「リップロール」もおすすめです。唇をゆるく閉じて、息を吹いて唇をぶるぶる震わせます。一定のブーっという音が出ていればOKです。声帯をリラックスさせながら息の流れを整える練習で、歌の前のウォームアップにも向いています。
「あくびで喉を開く感覚をつかむ」こと。本物のあくびをしながら喉の奥が広がる感覚を意識して、そのまま「あー」と声を出してみます。喉が開いた状態での発声を体で覚える練習です。
「口を大きく開けて母音をはっきり発音する」練習も地味ですが効きます。「あ・い・う・え・お」をひとつずつ、鏡の前で口の形を確認しながら発音します。特に「あ」は縦に、「う」は前に口をすぼめることを意識してください。
最後に「ラ・タ・ナ・カ」行の発声練習。舌をよく動かすことで声道が広がりやすくなります。ゆっくりはっきり言えるようになったら、少しずつテンポを上げていきます。
これらを毎日5〜10分でも続けていくと、少しずつ変化が出てきます。焦らずていねいに取り組んでみてください。
練習してるのに声量が変わらない、という方へ
腹式呼吸を意識して、口も開けて、でもなかなか変わらない。そういうことはよくあります。
そのときに見落としやすいのが、「体全体の緊張」です。肩や首に力が入ったまま、体がこわばったまま歌っていると、息の通り道がつぶれてしまって、口元だけ頑張っても響きが出にくい状態になります。
声の通り道は、喉から始まって体全体につながっています。喉や口だけを頑張っても、体全体がかたまっていると息がうまく入らず、響きが出にくくなります。
プロの歌手が発声練習と並行して体のコンディションを整えているのも、このためです。体の状態を整えていくことで、力まずに声が出るようになった方がいます。
声の悩みに関連して参考になる記事もあわせてどうぞ。 声が通らない人へ 喉の力を抜く方法 肩の力を抜く方法
声とからだの関係をもっと深めたい方へ
声量の問題は、発声の技術だけで完結しないことがあります。発声の基礎については発声の基本でさらに詳しく解説しています。また高音が出るようになる方法や音程が取れるようになる方法も、声量アップと組み合わせて取り組むと相乗効果が出やすいです。
体の使い方を根本から整えることに興味がある方は、こちらも参考にしてみてください。

