いつも気持ちよく歌えていたのに、今日に限って声がかすれる。高音で力んでしまって、喉がぎゅっと閉まる感じがする。毎回そうなってしまう、という方もいます。
「体調のせいかな」「練習不足かな」とつい思いがちですが、声の出かたが日によってぶれる原因は、そこだけじゃないことが多いです。
体の状態が変わると、声も変わってくる。その話をします。
なんで今日に限って、いつもの声が出ないんだろう

家でハミングしたときや、シャワーを浴びながら歌ったときはわりとよく出るのに、いざカラオケのマイクを持ったとたん声が変わってしまう。こういったことはよく起きます。
理由はいくつか考えられますが、大きいのは「環境が変わると体の緊張が変わる」という点です。カラオケルームは密室で、マイクと音量があって、誰かに聴かれているかもしれない状況です。そこに立つだけで、体はじわじわと力を入れていることがあります。
その力みが声道(声が通る道)を細くしたり、呼吸を浅くしたりします。結果として、いつもより声量が落ちたり、音が詰まった感じになったりするのです。
もうひとつ見落とされがちなのが「体の疲れや張り」の影響です。仕事で長時間デスクワークをした日、肩や首がこった日は、それだけで声の通りが変わりやすいです。声を出す筋肉と、肩や首の筋肉はつながっているからです。
あの声はどこへ行ったの?体の中で起きていること
緊張したとき、体はすっと息が浅くなります。これは自律神経(体を自動でコントロールしている仕組み)の影響で、意識しなくても起きることです。
息が浅くなると、声を支える呼吸の力が弱くなります。声量が出ないのはもちろん、音程が安定しにくくなったり、高音が途中でひっくり返ったりしやすくなります。
さらに「うまく歌わなければ」という意識が加わると、喉の力みが増します。喉の力み——これが声にとって最もやっかいな状態で、音を出そうとすればするほど余計な力が入り、かえって声が出にくくなるという悪循環を生んでしまいます。
ただ、緊張そのものが問題なのではありません。体の状態が整っていれば、多少の緊張があっても声は出やすい状態を保てます。逆に体の張りや疲れが蓄積していると、緊張が少し加わっただけでも声が出にくくなります。
体の状態と声は、切っても切れない関係にあるのです。
カラオケで声が出やすくなる体の整え方
声の出かたを整えるうえで大切なのは、喉だけを意識するのではなく、体全体の状態を見ることです。
まず肩と首の張りを抜くことが出発点になります。肩の力が入ったまま歌おうとすると、胸が広がりにくく、呼吸が浅いままになります。歌う前に肩をゆっくり回したり、首を左右にそっと倒したりするだけでも、張りがほぐれてすっと息が入りやすくなります。
肩の力の抜き方については、肩の力を抜く方法でくわしく書いています。
次に意識したいのが、呼吸の深さです。歌う直前に深呼吸するとよいと聞いたことがある方も多いと思いますが、無理に深く吸おうとすると逆に力が入ってしまうことがあります。
コツは「吐ききること」です。まず息をゆっくり全部吐く。そうすると自然に次の息がすっと入ってきます。この感覚をつかむと、歌っているときも呼吸が途切れにくくなります。
また、声を「のどから出す」ではなく「体全体で支える」というイメージに切り替えることも助けになります。発声の基本的な体の使い方については、発声の基本にまとめています。
カラオケで高い声が出ない・詰まる人へ(喉でなく体の問題)
高音のとき、体の中では何が起きているか
高音を出そうとしたとき、喉がきゅっと閉まる感じ、声がひっくり返る感じ——これは喉そのものの問題だと思っている方が多いですが、実は体の張りと深く関係していることがあります。
高音を出すとき、体は自然と引き上がるような動きをします。このとき肩や首、背中が固まっていると、体の動きが制限されてしまいます。すると喉だけで音を出そうと頑張ることになり、力んでいるのに声が出ないという状態になります。
喉より先に肩を整えると変わることがある
喉の力みを解消しようとするとき、喉だけを意識してリラックスしようとしても、なかなかうまくいかないことがあります。それよりも肩の力が抜けると、喉の余計な力みがすっと消えていく、という経験をされた方がいます。
喉を直接触ろうとするより、体全体の状態を整えることで声が変わるというアプローチです。
喉の力みを抜くための体の使い方については、喉の力を抜く方法で取り上げています。
高音になると毎回詰まるという方は、歌の練習だけでなく体の状態を整えることから始めてみるのも一つの選択肢です。
本番前にできること(カラオケ前の整え方)
カラオケに行く前に少しだけ体を整えておくと、声の出かたが安定しやすくなります。大がかりなことは必要ありません。
まず移動中や直前に意識してほしいのが、猫背になっていないかという点です。前屈みの姿勢で歩いたり、スマホを見ながら首が前に出た状態が続いたりすると、胸が縮こまって息が浅くなりやすいです。歌う前から体が縮んでいる状態です。
少し意識して胸を開き、頭を背骨の上に乗せるようなイメージで姿勢を整えるだけで、呼吸が変わります。
それから声を出す前に「ため息をつく」ような感じで、軽く息を吐いてみてください。ため息というのは自然に体の力が抜ける動きです。ぐっと力を入れた後ではなく、すっと息を吐くことで体がほぐれ、声の通り道が広がりやすくなります。
また、カラオケで声が出にくい日は「温度」も関係していることがあります。冷たいドリンクを続けて飲むと喉が冷えて声道が固まりやすくなります。最初の数曲は常温か温かい飲み物を選ぶと、声の出かたが落ち着きやすいです。
これらはどれも「体をリラックスさせる」方向への働きかけです。体が整うと声が出やすくなる——その関係を体験として知っておくと、声の変化に振り回されにくくなります。
体の使い方を学んでみたい方へ
カラオケで声が出にくくなる背景には、緊張・呼吸の浅さ・体の張りなど、複数のことが重なっていることがほとんどです。体の力みが取れると、声の通り道が広がり、以前より楽に音が出せる状態になることがあります。声のトレーニングだけでなく、体の使い方から整えるアプローチに興味がある方は、ぜひ一度体験してみてください。
「前は楽に出ていたのに」という感覚がある方ほど、体の状態が変わっているサインかもしれません。声は体が整ってくると、少しずつ戻ってくることがあります。
声がいつも安定している人は、特別な練習をしているわけではなく、体の状態が安定しているだけのことが多いです。喉だけで歌おうとしていた方が、体全体で支えるアプローチに切り替えてから「カラオケが楽しくなった」という話を聞くことがあります。
