ピアノで手首が痛い|手首より先に見直したい体の使い方

ピアノで手首が痛い|手首より先に見直したい体の使い方 楽器と脱力

ピアノを30分ほど弾いて、同じ小節を何度も繰り返しているうちに、手首の外側がじわっと重くなってくる。そのまま続けていると、重さに痛みが混じってきます。いったん手を膝に置いてぶらぶらさせると少しだけ戻る。それでまた弾きはじめると、さっきより早く同じところが痛くなります。

そんな夜が何日か続くと、鍵盤の前に座るのが少し気重になります。痛みが出たとき、最初に疑うのはたいてい手首や指の力です。ストレッチを調べて、手首を回してみる。それでも次の日、また同じところが重くなる。

今すでに痛みが出ているなら、今日は無理に弾かず手を休ませてください。痛みが長く続くようなら、一度専門家に見てもらうのが安心です。

そのうえで、見る場所を手首から少しだけ外へ広げてみます。腕と肩の使い方、椅子と足元の安定、手を休ませるタイミング。この手前側が変わると、同じ曲を同じだけ弾いても、翌日に残る重さは変わってきます。

手首が痛いままで、ストレッチをしても次の日また同じところが重い

まず、弾いているときの自分の動きを思い出してみてください。指を鍵盤に打ちつけるように弾いていないか。腕はほとんど止まったまま、指だけが動いていないか。手首をくいっと折って、その反動で音を出していないか。どれかに心当たりがあれば、手首は今、かなり働かされています。

どれも、手首から先だけで音を作ろうとしたときに出てくる動きです。指の力が足りないから痛くなるというより、腕の重みを使わずに弾いているぶんを、手首と指が引き受けている。習いはじめの時期に限った話ではなく、何年も弾き続けていても同じように起こります。

手首は、力を出す場所ではありません

手首は、腕全体の重みや動きが鍵盤へ伝わっていく通り道です。通り道そのものは、大きな力を作り出す形をしていません。手前にある肩や腕が固まって重みが届かないと、足りないぶんを手首が自力で埋めることになります。毎回きまって同じところが重くなるのは、この埋め合わせが同じ場所で起きているからです。

初心者のうちはフォームがまだ固まっていないので、ここが起きやすくなります。だから、手首の角度だけを直しても変化が出にくいことがあります。負担がどこから流れてきているのかを、腕や肩、座り方まで含めて見たほうが早く進みます。

オクターブや和音で、いつも同じところが痛くなりませんか

ピアノの鍵盤でオクターブを広げて弾く手と手首のアップ

手首の重さは、曲のどこでも均等に出るわけではありません。オクターブが続く場面、和音を続けて弾くところ、速いパッセージ(指を速く動かし続ける場面)で指がもつれそうになるところ。決まって同じ場所で重くなっていませんか。

オクターブや和音は、指を大きく開いた状態のまま何度も鍵盤を押さえる動きです。手のひらが広がったまま緊張し続けるため、手首の外側や前腕(ひじから手首までの間)に負担が集まります。手を大きく移動させる跳躍では、手首をひねりながら飛ぶ動きが加わって、負担はさらに増えます。

開いた手の形をそのまま打ちつけ続けず、一打ごとに指の力をふっとゆるめる。移動するときは手首だけをひねらず、腕ごと運ぶ。押さえた瞬間だけ力を使えば、音が鳴った直後にはもう力はいりません。同じ場面でも、手首にかかる負担は変わってきます。

左手は、意識の外で力みがちです

左手の伴奏のパターンも、見落とされやすい場所です。右手のメロディーに意識が向いているあいだ、左手は同じ動きを機械的に繰り返しています。

ドミソを一音ずつ順に鳴らす分散和音を延々と回しているうちに、指を離しきらず押さえっぱなしになっていることもあります。意識の外にあるぶん力みに気づきにくく、気づいたときには手のひらまで重くなっていた、ということが起こります。

30分弾き続けていませんか

練習時間の区切り方も見直したいところです。痛みが出ているときほど、弾けるようになるまでと時間を決めずに続けてしまいます。ただ、弾きすぎは負担をそのまま積み重ねます。

目安のひとつは、20分から30分にいちど、鍵盤から手を下ろすことです。1曲弾き終えたところ、あるいはキリのいい小節までで区切って、両腕をだらんと下げて数十秒。この短い区切りを入れるだけでも、負担の積み重なり方は変わります。腱鞘炎の予防という意味でも、続けやすい習慣です。

同じ難所を繰り返す練習は、特に負担が偏ります。詰まったところを続けて何度も弾くより、ほかの箇所を挟んでから戻るほうが、手首は休めます。

弾く前と後に、腕を下ろしていますか

弾きはじめる前に、椅子に座ったまま両腕をだらんと下ろして、肩から先の重さを感じてみてください。腕がずしっと重たく感じるなら、力は抜けています。逆に軽く感じるときは、肩がすでに持ち上がっていることが多いです。

弾き終わったあとも同じです。手を下ろしてしばらくぶらぶらさせてから閉じると、緊張したままの状態で練習を終えずにすみます。準備運動というほど大げさなものではなく、前とあとにはさむだけです。

「力を抜いて」が効かないのは、抜く順番かもしれません

レッスンで「力を抜いて」と言われたこと、ありませんか。言われた瞬間に抜こうとすると、かえって手や腕にぎゅっと力が入る。あの感じです。

意志の弱さや練習不足の問題ではありません。抜こうと意識すること自体が、新しい緊張を生みます。手先だけを対象にゆるめようとしてうまくいかないのは、自然な結果です。

指先から抜こうとしていませんか

肩が持ち上がったまま、指だけをゆるめようとしたときのことを思い出してみてください。指はふっと軽くなるのに、一音弾いた次の瞬間にはもう元に戻っている。腕の付け根が固まっていると、指先だけを抜いた状態は続きません。

順番があります。座り方、肩、腕、指。体に近いところから整っていくほど、その先にある指先の力は抜けやすくなります。手先の力みは、手先だけの問題として片づけにくいところです。

見直したいのは、椅子と足元です

足の裏を床につけ、椅子の高さを合わせてピアノを弾く女性を横から見た様子

手首の負担というと、つい腕や手のことばかりに意識が向きます。ただ、座り方と足元は、腕の使い方に直接つながっています。

座り方が安定していないと、体は上半身のどこかで無意識にバランスを取ります。その結果、肩や腕がこわばって、腕の重さが鍵盤まで届かなくなります。届かないぶんを指先と手首の力で補うことになり、負担がそこに集まります。

椅子と鍵盤の距離、合っていますか

目安のひとつは、ひじの高さです。腕を鍵盤に置いたとき、ひじが鍵盤よりわずかに高いか、同じくらいの高さにあると、腕の重さをそのまま鍵盤に乗せやすくなります。椅子が低すぎるとひじが下がり、腕を持ち上げながら弾くことになります。高すぎると肩が持ち上がって、そのまま力みにつながります。

鍵盤との距離は、腕を伸ばしきらず、ひじに軽くゆとりが残るくらいが目安です。近すぎるとひじが体の横に入り込み、腕を縮めた形で弾くことになります。座ったまま両手を鍵盤に置いて、ひじが体の少し前にあるかどうかを見てみてください。

手首の角度、反らせすぎていませんか

手首は反らせすぎず、下げすぎず、手の甲から腕までがゆるやかにつながっているくらいが、負担の少ない角度です。

反らせすぎているのは、手首が落ちて、指の付け根より低い位置にきている形です。この形だと腕から来た重さが手首の手前で止まり、指を持ち上げるために余分な力を使います。逆に手首が高く上がりすぎると、指先が鍵盤に届きにくくなって、上から押し込むような弾き方になります。

確かめ方はかんたんです。スマホを譜面台の横に立てて、1曲だけ短く撮ってみてください。真正面からだと角度がつぶれて見えるので、鍵盤の横から狙うのがコツです。鏡を横に置くだけでもわかります。止まっているときの形だけでなく、弾いている最中に崩れていないかも見てみてください。

足の裏、床についていますか

椅子の高さが合っていても、足の裏が床についていないと、体は足元で踏ん張れません。すると上半身のどこかで、無理にバランスを取ろうとします。座ったとき、両足の裏全体が床に触れているか、かかとが浮いていないかを確認してみてください。高さの合う椅子がないときは、足元に低い台を置くだけでも変わります。

椅子との距離と足元が体に合っていると、肩から腕が自然にぶら下がる状態を作りやすくなります。腕がぶら下がっていれば、腕そのものの重さがそのまま鍵盤に乗って、手首や指先で無理に力を出さなくても音が出ます。肩の力を抜く方法でも触れていますが、肩から腕にかけての力みは、手先の負担に直結しています。

椅子を一段上げて、足元に低い台を置いた。そこから手首の重さを感じにくくなった、という方もいます。椅子の高さ、鍵盤との距離、足元の安定。どれも今日の練習からすぐ試せるところです。

一人で練習していると、気づかないまま同じ弾き方を続けてしまう

スマホで自分のピアノ演奏を横から撮影している女性

レッスンで「また肩が上がってるよ」と言われて、その場では直る。先生の前では軽く弾けた気がするのに、家で一人で弾きはじめると、数分後にはもう元の弾き方に戻っている。言われた内容は覚えているのに、体のほうが戻ってしまう。よくあることです。

直せないのではなく、直った状態が自分では見えていないからです。弾いている最中の自分の肩や手首は、視界に入っていても意識には入りません。

撮ってみると、思っていた形と違いませんか

横から撮った映像を再生すると、たいてい思っていた形とずれています。肩は下ろしているつもりで上がっている。手首はまっすぐのつもりで、難所に入った瞬間だけ落ちている。

このズレがあること自体は、珍しくありません。大事なのは、ズレの中身がわかると練習が変わることです。「今、肩が上がったな」と弾きながら気づけるようになると、次に同じ場面が来たときに自分で戻せます。

弾く前と後で、何が変わりましたか

練習の前後の違いも、ひとつの目安になります。弾き始めは平気だったのに、30分後には手首の重さが出はじめている。これは黄色信号と考えていいでしょう。逆に、長めに弾いても重さが出にくかった日の弾き方や座り方を覚えておくと、自分にとって負担の少ない形が見つけやすくなります。

重さではなく痛みが出ている日は、そこで終わりにしてください。痛みが残ったまま次の日も弾き続けるより、いったん休ませるほうが安心です。長引くようなら、専門家に見てもらってください。

よくある質問

Q: 電子ピアノとアコースティックピアノで、手首への負担は変わりますか?

A: 鍵盤の重さや戻り方が違うので、弾いたときの感じ方は変わります。ただ、負担の大きさを決めているのは、楽器よりも弾き方と座り方のほうです。電子ピアノは専用の椅子ではなく食卓の椅子で弾いていることも多く、置き台が高いと肩が上がったままになります。まずひじの高さと足元を確認してみてください。

Q: 毎日弾かないほうがいいですか?

A: 毎日弾くこと自体が負担になるわけではありません。効いてくるのは、1回の長さと弾き方のほうです。手首に重さが残った日は翌日を短めにする、難所の繰り返しだけで終わる日を作らない。この程度の調整でも、続け方はだいぶ変わります。

Q: 弾いている途中で手首の形が崩れてしまうのはなぜですか?

A: 疲れて腕を支えていられなくなると、手首は落ちるか、逆に持ち上がります。難所や速い場面で急に崩れるのは、そこだけ力の入れ方が変わるからです。形を意識で保とうとするより、区切って腕を下ろすほうが戻りやすくなります。椅子の高さが合っていないと、弾きはじめから崩れた形になりやすいところにも注意してみてください。

Q: レッスンで直してもらえば済む話ですか?

A: レッスンで見てもらえるのは大きな助けになります。一方で、その場では直っても、家で一人になると元の弾き方に戻ることは多いです。練習の前後の違いや、撮った映像とのズレといった自分で気づける手がかりを持っておくと、レッスンで直った状態を保ちやすくなります。

痛くなりにくい弾き方を、体から探してみませんか

オクターブや和音のように負担が集まる場面を知っておくこと。力を抜く順番を、手先ではなく体に近いところから考え直すこと。椅子や足元の土台は、その順番の一番下にあります。手首だけを見ていたときとは違う角度が見えてきます。力を抜く順番をもう少し詳しく見るなら、ピアノの脱力ができないでも扱っています。

ただ、鏡や動画に映るのは、姿勢や手首の角度といった目に見える形までです。腕の重さがどこで止まっているのかまでは映りません。ピアノの弾き方を教わるのとは別に、立ち方や座り方といった体の土台を、実際に動きながら見てもらう場があります。座り方が変わると腕の重さの感じ方がどう変わるのか、その場で自分の体で確かめられます。

フォームは直したはずなのに、家では戻ってしまう。何が起きているのか自分では見えない。そんなときは、体のほうから確かめてみるのもひとつの方法です。まだ椅子の高さも足元も試していない段階なら、そこを変えてみてからでも遅くありません。

体の使い方を体験してみたい方へ

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